社会的孤立が健康に及ぼす影響と孤立対策の現状

Influence of social isolation on health conditions and current measures against social isolation

はじめに

　新型コロナウイルス感染症（以下，コロナ）の蔓延によって，われわれの日常は一変したといっても過言ではない．会議やセミナーなども，多くがオンラインで開催されるようになった．テレワークが浸透し，働き方に多様性が生まれた．

　「人とのつながり」に関しても大きな変化があった．人と距離を取ることが求められ，会って話をするにしてもマスクを着用しないとお互いに心地が悪くなってしまう．気軽に人とお喋りすることも難しくなってしまった．かつては何のバリアもなくできていた「人とつながること」が，今や非常にエネルギーの要る行為になってしまったといえる．2023年に入ってからはコロナの扱いが変わりつつあるものの，われわれの生活スタイルがコロナ前とは異なるものになっていることは，多くの人が認めるところだろう．

　他者とのかかわりやつながりが著しく少ない状態は「社会的孤立」（social isolation）と呼ばれる．コロナ禍では社会的孤立が大きく取り沙汰された．実際，わが国では2021年，イギリスに次いで世界で2番目の孤独・孤立対策担当大臣が設置されたことは記憶に新しい．本稿では，この社会的孤立が健康にどう関係しているかをレビューし，国や自治体の孤立対策について概観していきたい．