連載 摂食嚥下機能障害のリハビリテーション治療の倫理的な葛藤・第2回
嚥下障害をめぐる臨床倫理コンサルテーションにおける「倫理的な葛藤」
板井 孝壱郎
1,2
Koichiro Itai
1,2
1宮崎大学医学部社会医学講座生命・医療倫理学分野
2宮崎大学医学部附属病院中央診療部門臨床倫理部
1Department of Social Medicine, Biomedical Ethics, Faculty of Medicine, University of Miyazaki
2Division of Clinical Ethics, Central Clinical Facilities, University of Miyazaki Hospital
キーワード:
倫理的な葛藤
,
倫理的に感じる力
,
倫理的に考える力
,
倫理カンファレンス
Keyword:
倫理的な葛藤
,
倫理的に感じる力
,
倫理的に考える力
,
倫理カンファレンス
pp.335-337
発行日 2023年3月10日
Published Date 2023/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202782
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「葛藤」とは何か?
「葛藤」という言葉には,注意して欲しいことがあります.それは,単なる「悩み」とは異なる,ということです.
まずは,以下の事例 ① を考えてみてください.
事例 ①
誤嚥性肺炎のリスクがある末期がんの80歳台男性が,「死んでもいいから食べたい」と強く希望しています.末期がんなので,「残された時間を本人らしく過ごしていただくという意味でも生活の質(quality of life:QOL)を重視するなら,口から食べたい,という本人の想いを実現して差し上げることは,倫理的にも善いことだ」と,多職種カンファレンスでも意見がまとまりました.患者さんご本人は判断能力はしっかりしており,万一の窒息の危険性などについても冷静に理解・納得・同意してくださっています.ところが,患者さんの奥様が「もし誤嚥して,肺炎になって死んだら,どうするんですか!?」と経口摂取には同意してくれず,強く反対しています.
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