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はじめに
コミュニケーション行動は,われわれが生まれてまもなくから発達し始める.子どもはことばを話し始める1歳前であっても,泣き声や視線,表情,体の動きを使って,コミュニケーションをとろうとしている.養育者は,子どもが泣くと「お腹がすいたの?」と声をかけてあやし,共感的に返事する.大人の応答的な行動のおかげで,子どもの「伝えたい気持ち」は「伝えたい相手」に届き,相互的なコミュニケーションの成立がうまくいくという経験が積み重なっていく.言語能力は,このコミュニケーションの経験を土台として相互性が育っていく.
子どもは就学前6歳頃になると,自分の考えを口頭で説明できるほどの基本的な言語能力を持つ.就学後は,読み書きの学習が進むにしたがって,知識を得るための道具として言語を使いこなし,複雑な思考や推論ができるようになっていく.家族,学校,友人関係といった社会の中で他者と協力し合い,人間関係を成立させるために言語・コミュニケーション能力は欠かせない.小児期に脳損傷によって,その発達が途絶されることはさまざまな困難さにつながり,学習や社会参加の機会が失われることにつながりかねない.
急性期医療を担う国立成育医療研究センター(以下,当院)では,先天的な言語発達障害を持つ子ども以外にも,脳損傷に起因する後天的な言語・コミュニケーション障害を持つ子どもへのリハビリテーション治療を行っている.言語聴覚士をはじめとした子どもの言語・コミュニケーション支援に携わる専門家の重要な役割は,言語・コミュニケーション的な視点から子どもを深く理解し,さまざまな援助方法を用いて全体的な発達を促すことと,家族が子どもの発達を支えられるようサポートすることにある.本稿では,脳損傷後の言語・コミュニケーション障害に関して支援・指導の実際について述べる.
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