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はじめに
正常な嚥下や会話には,口腔からの正確な感覚フィードバックを必要とする.健常者の口腔感覚は加齢によっても比較的保たれていると報告1)されているが,一方で,健常高齢者では口腔が不衛生であるために,味覚の閾値が上昇していることを示す研究2)もみられる.したがって,言語療法(以下,STと略)は,最良の感覚フィードバックを得られるよう衛生状態の良い口腔で行われるべきと考える.近年,リハビリテーションに携わる歯科医療側から,比較的慢性期の脳卒中患者を対象に,口腔の不衛生を指摘した研究3,4)がみられるが,急性期の口腔衛生を扱った報告はみられない.
当院では,他科からの依頼を受けて急性期より脳卒中のリハビリテーションを開始している.救命救急センターへ搬送された急性期脳卒中患者は,主治医の判断で救急病棟・ICU(Intensive Care Unit)を介して一般病棟に入院する場合と,直接一般病棟に入院する場合とに分けられる.発症直後を含む早期から,主治医を介したリハビリテーション依頼があり,リハビリテーション医による処方の後,訓練を開始しているが,比較的慢性期の患者は関連病院へ転院し,治療を継続することが多い.
一般に,言語障害,嚥下障害を有する患者に対するSTは,全身状態が安定して訓練室へ出棟可能となってから処方することが多い.しかしながら,その際,口腔衛生が必ずしも良好とはいえない患者を少なからず経験する.最良の口腔衛生でSTを開始するためには,ST開始前からの口腔アプローチが必要である.
そこで今回,ST開始時の脳卒中患者における口腔衛生を調査するのに先だって,ST開始時に予測される口腔衛生上の問題点を明確化するために,当院STの対象における脳卒中患者の実態と,脳卒中患者のリハビリテーションを依頼してくる病棟における医療従事者の口腔衛生への関心度を調査した.
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