Japanese
English
特集 脊髄損傷の多角的マネジメント
体温調節障害
Thermoregulatory disorders in spinal cord injury person
林 聡太郎
1
,
内藤 貴司
2
Sotaro Hayashi
1
,
Takashi Naito
2
1福山市立大学都市経営学部
2北海学園大学法学部
1Faculty of Urban Management, Fukuyama City University
2Faculty of Law, Hokkai-Gakuen University
キーワード:
脊髄損傷
,
体温調節
,
深部体温
,
身体冷却
Keyword:
脊髄損傷
,
体温調節
,
深部体温
,
身体冷却
pp.1093-1098
発行日 2022年9月10日
Published Date 2022/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202614
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はじめに
ヒトの体温は,熱放散と熱産生によって深部体温が約37℃になるように調節されている.しかしながら,脊髄損傷者は健常者と比較すると,環境温に依存して深部体温が変動しやすく,寒冷環境においては深部体温が健常者よりも低下し,暑熱環境では上昇する1,2).これは損傷レベルの影響が大きい者ほど,麻痺領域が広範囲に及んでいることから顕著である3,4).中枢神経である脊髄を損傷すると交感神経性調節機能不全となり,受傷部以下の体温調節機能が低下する.体温調節にかかわる効果器の能力低下に加え,体温調節機能が利用できる感覚情報量も減少しているためである.損傷レベルが高くなり皮膚感覚が失われている部位が拡大すると,体温の状態に関する求心性情報と遠心性反応が減少する5).暑熱下における身体各部の発汗反応と皮膚温の関係から健常者の皮膚の熱感受性を100%としたとき,四肢麻痺では約30%,胸中部レベル損傷(T6で体幹部麻痺)の対麻痺では57%,T7以下の損傷では約74%程度となる.一方で寒冷下では,骨格筋を効果器とするふるえ(shivering)による熱産生は,健常者を100%とすると,対麻痺では50%,四肢麻痺では25%程度まで低下する2).気温の変動が大きい本邦において,種々の環境温における脊髄損傷者の体温維持は重要な課題である.本稿では,脊髄損傷者の体温調節障害の特徴と暑熱環境および寒冷環境下における対策について概説する.
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