体温調節と発熱の中枢司令の基本原理

Basic principles of central command mechanisms for thermoregulation and fever

　人間を含めた恒温動物の体温は厳密に制御され，その温熱恒常性は生命機能の基盤をなす．体温調節における脳の中枢は視索前野にあるが，体温調節システムの司令塔の役割を担うニューロン群は不明であった．筆者らは最近，視索前野のプロスタグランジンEP3受容体発現ニューロン群（以下，EP3ニューロン群）が自律的な体温調節のマスターコントローラーであることをラットで見出した．EP3ニューロン群は視床下部や延髄の交感神経駆動ニューロン群に恒常的なGABA作動性の抑制信号を送ることで体温調節効果器の制御を行い，上下自在に体温を調節する．同定した体温調節の司令塔ニューロン群を軸に，温熱恒常性を担う中枢神経制御メカニズムの基本的な動作原理のモデルが提示された．これは全身の生体パラメータを調和的に調節する生体恒常性の基本原理の中核を担う可能性がある．また今後，人間の体温を人工調節し，地球温暖化を生き抜くための技術開発につながることが期待される．