書評
安保 雅博【監修】 原 寛美,髙橋 忠志【編集】「エビデンスに基づくボツリヌス治療—上肢・下肢痙縮に対するリハビリテーションの最適化のために」
角田 亘
1
1国際医療福祉大学
pp.1076
発行日 2022年9月10日
Published Date 2022/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202610
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医療・医学のテキストを手にする(購入する)動機なるものは,以下の三つに分けられる.第一は,まったくの初学者が,その分野について一から(ゼロから)学ぶ場合である.第二は,ある程度その分野を経験した者が,さらなるブラッシュアップを決意した場合である.そして第三は,自称(もしくは他薦)でその分野のスペシャリストとなった者が,まだ残されていた弱点(スペシャリストでありながら,実は知らなかった知見)をこっそりと繕うためである.このたび上梓された本書は「ボツリヌス治療」についてであれば,一冊でこれら三つの動機に十分にお応えすることができる.最近流行りの言葉を使うのであれば,二刀流どころか「三刀流」の「ボツリヌス治療のテキスト」が世に登場したわけだ.
上下肢痙縮に対するボツリヌス治療が本邦で始まって以来すでに10年以上が経過し,着実にボツリヌス治療は全国津々浦々にまで広まってきている.つまりは,量(quantity)としては間違いなく発展してきた.そして現時点では,ボツリヌス治療の「さらなる質(quality)の向上」が課題となっている.このような時期に登場した本書が,本邦のボツリヌス治療の「質の向上」を一気に推し進めるものと私は期待する.ボツリヌス治療が新たなステージに進むためには,本書が必読のものとなるような予感がする.
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