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はじめに
本稿は,COVID-19による緊急事態宣言前に執筆されており,今後の流行状況を踏まえた医療政策上の動向に留意が必要である.
わが国が人口減少局面を迎え,少子高齢化社会に突入していることは周知の通りであるが,2025年にはいわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者になり,2060年には総人口が9000万人を割り込み,高齢化率は40%に近い水準になると推計されている.一方で地域ごとに人口変化の分析を行うと,高齢化の進展には地域ごとに差があり,都市部では,今後高齢者が大幅に増加することが予測される一方で,東北地方や北陸地方では高齢化のピークをすでに迎えている.中にはすでに人口減少が始まっている都道府県も存在している.
したがって,地域ごとに,質・量ともに医療・介護サービスに対するニーズが大きく異なる.地域ごとにそれぞれの現状,そして将来の変化に即した医療・介護提供体制の再構築が求められている.こうした状況のなかで,2014年に成立した「医療介護総合確保推進法」に基づき医療法が改正され,2015年4月から都道府県による地域医療構想の策定が始まった.地域医療構想は,構想区域ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計するものであり,それを踏まえて病床の機能分化・連携を推進することを目的としている.また,2015年12月に厚生労働省で「医療従事者の需給に関する検討会」が立ち上げられ,医療従事者需給の観点から,特に,医師需給の観点から,将来の医療需要に対応した医療提供体制の構築に向けた議論が進められてきた.現在,これら2つの改革に「医師の働き方改革」を加えた3つの動きが並行している.それらは互いに深く関係しあい,医療提供体制の改革の大きな柱として存在している.本稿ではわが国の今後の医療需給推計を踏まえた地域医療計画の必要性を説明し,厚生労働省の推進する本計画の現在の方針,さらには地域医療計画で重要な役割を担う地域医療構想を説明しながら,本計画の実施の進捗状況を概観する.
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