Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「あの日の声を探して」—戦争の実相を失声症の少年と殺人兵器化する普通の若者をとおして描く
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.889
発行日 2015年9月10日
Published Date 2015/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200370
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米軍対独軍,米軍対日本軍といった戦争活劇が影を潜めるようになったのは,1970年代,ベトナム戦争以降である.では,ここ1年ほどの傾向はどうか.キーワードは,「子供」.
イラク戦争下の伝説の米軍狙撃手を描いた「アメリカン・スナイパー」で最初に標的になったのは子供であり,次の標的はその子の母親だった.アフガニスタンでタリバンと戦う米軍偵察部隊の顛末を描いた「ローン・サバイバー」では,偶然出会った子供を含む農民家族を皆殺しにすべきかどうかという問題に直面する.第二次世界大戦末期の米軍戦車部隊の戦いぶりを描いた「フューリー」では,最前線兵士として送り込まれてきたドイツの子供たちを図らずも殺すことになる.これらの作品に宿っているのは,好戦・反戦という図式で割り切れない厭戦感情である.
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