Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
上田秋成の『雨月物語』—和歌による癒し
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.888
発行日 2015年9月10日
Published Date 2015/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200369
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江戸時代中期の安永5年(1776)に上田秋成が発表した『雨月物語』(青木正次全訳注,講談社)の冒頭に収められている『白峯』は,この世に恨みを残して亡くなった崇徳院の墓を,歌人の西行が訪れるという話である.
讃岐の白峯という所に,若くして引退させられた崇徳院の御陵があると聞いた西行が,その山に登った時のことである.「今夜は夜を通して罪に苦しむ霊を救う供養をしてさしあげよう」と決心した西行が,墓前で鎮魂の歌を詠みながら,「夜露(涙)でどれほど袖をふかくぬらしたことか」と,院の無念に思いをはせた.
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