特集 変貌する農村の社会医学的研究—第6回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題報告Ⅲ
農村における医療保健活動の実相
若月 俊一
1
1長野県佐久総合病院
pp.644-653
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203146
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農民の健康はまもられてない
現在わが国における保健と医療の活動が困難をきわめていることは衆知のとおりであります。まして農村地帯では高度経済成長のしわよせを受けて,苦しさが一層であります。医療は医療で,村の開業医はもちろんどんな病院でも,農村ではとくに経営が苦しいという。保健は保健でまた,国保の保健婦はもちろん保健所のようなお役所にしても,思うようなことが少しでもできないとなげいている実情であります。私どもはこの20年間,信州の山の中で,総合病院の立場から,保健と医療を綜合したコンプリヘンシィブらしき仕事の小経験をかさねてまいりましたが,今,会長のおすすめもありましたもので,あえてその実態をご報告し,またそれに対する私どもの考え方などを述べさせて頂き,わが国のそのような活動の困難性などについて,みなさまとの討論の材料にしたいと思う次第です。
この問題を論ずるに当って,まず第一に確認しておかねばならぬと思われることは,高度経済成長下にあるといわれるわが国の今日の農村民の健康状態が,その生活のみかけの「近代化」にもかかわらず,耐久消費財の購入,テレビが入った,電気冷蔵庫がたくさん買われたといっても,生活の土台をなしている健康は決してよくなったとはいえない。否,むしろ悪くなっている面が多くでているという事実です。
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