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特集 障害児者に関わる法制度改革の動向
障害者差別解消法の成立と取り組み課題―障害を理由に参加を妨げない社会設計を目指して
Enactment of the act on the elimination of discrimination against persons with disabilities―towards a society that does not prohibit full participation based on disability.
引馬 知子
1
Tomoko Hikuma
1
1田園調布学園大学人間福祉学部
1Department of Human Welfare, Den-en Chofu University
キーワード:
ソーシャルインクルージョン
,
障害者権利条約
,
差別禁止(機会均等)
,
合理的配慮
Keyword:
ソーシャルインクルージョン
,
障害者権利条約
,
差別禁止(機会均等)
,
合理的配慮
pp.731-740
発行日 2013年8月10日
Published Date 2013/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110205
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法の成立と意義
日本において,すべての人々が障害の有無によって分け隔てられない共生社会を実現するため,「障害を理由とする差別の解消に関する法律(以下,障害者差別解消法)」が,2013年6月19日,第138回通常国会にて成立した.同法は,障害のある人々(子どもを含む)が,公共交通やサービスの利用,医療,雇用,教育,司法,選挙などのさまざまな場面で直面してきた困難を,合理的配慮を含む非差別を確保することによって削減し,障害のある人々の主体的な社会参加の機会を広範な場面で保障しようとするものである.すなわち同法は,行政機関や独立行政法人,事業者(=民間事業者)と障害のある個々人が,社会生活上の個々の場面において,差別解消のためにどのような関係を築くべきかを取り扱うのである.
障害を理由とする差別の解消には,少なくとも2つの意義が見出される.一つには,機会均等化は障害のある人々が等しく主体的な生活を構築する可能性を広げ,通常の社会生活の場や障害者のみを対象とした保護的な場で障害者が往々にして経験してきた質の低さなどを緩和し,その結果として貧困削減や人権の保障を促すことである*1).二つには,少子高齢社会にある日本において,多様な人々が社会のさまざまな場に参画し,その個性を発揮し得る点で,社会全体に経済的および社会的な安定や活力を生み出すことである.
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