特集 障害者権利条約の実現と理学療法
「障害者差別解消法」制定のねらいと経緯
伊東 弘泰
1,2,3,4,5,6
Hiroyasu Itoh
1,2,3,4,5,6
1特定非営利活動法人日本アビリティーズ協会
2一般社団法人障害者の差別の禁止・解消を推進する全国ネットワーク
3アビリティーズ・ケアネット株式会社
4特定非営利活動法人福祉フォーラム・ジャパン
5元・内閣府障害者政策委員会差別禁止部会
6日本理学療法士協会
キーワード:
障害者差別解消法
,
障害者権利条約
,
障害者差別禁止条例
Keyword:
障害者差別解消法
,
障害者権利条約
,
障害者差別禁止条例
pp.101-107
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200113
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障害者差別解消法,制定までの経緯
2013年6月,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下,障害者差別解消法)が国会で成立した.1990年に米国で障害者差別禁止法(Americans with Disabilities Act of 1990:ADA)が世界で最初に制定され,その後EUはじめ世界中で差別禁止法がつくられていった.当時,日本においても障害者団体などが中心になり,運動がなされた.しかし,その力は弱く,日本では無理なのか,という思いで,障害当事者の希望と期待は消えかかっていた.
2001年8月,国際連合(以下,国連)は日本政府に対して,差別禁止法を制定するように勧告した.しかし,当時の小泉純一郎政権は消極的であった.一方で,厚生労働省は財源を理由に障害者福祉を介護保険と統合することを進めていた.自立支援のプログラムが不十分な介護保険に障害福祉が統合されることは,心身に障害のある人の人生が制約されることになる,という危機感から,2001年12月に全国組織の障害当事者12団体が中心となり,「障害者差別禁止法を実現する全国ネットワーク(通称,JDAを実現する全国ネットワーク)」を結成,運動を開始した(図1).日本障害者協議会(Japan Council on Disability:JD),障害者インターナショナル(Disabled Peoples'International:DPI),日本障害フォーラム(Japan Disability Forum:JDF)などの障害者団体,そして日本弁護士連合会も運動を強化していった.
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