Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「おおかみこどもの雨と雪」―差別を許さない力の形成に接続する
二通 諭
1
1札幌学院大学文学部人間科学科
pp.683
発行日 2013年7月10日
Published Date 2013/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110187
- 有料閲覧
- 文献概要
以下は,筆者の発達障害児童生徒に対する教育実践経験からせり上がってきた教育目標である.① 差別を許さない力,② 仲間と連帯する力,③ 平和を守る力.教育学者矢川徳光が1973年に提起した教育目標論,① 手をつなぐ力,② だまされない力,③ 平和を守る力,に触発されたものである.筆者が一番目に挙げた「差別を許さない力」の形成も,その実現は難しい.計り知れない知性と精神性が要求されるからだ.
差別をしないための方略の一つに,あえて差別される側に回るという身の処し方がある.ハンセン病患者の子どもの入学に反対する地元住民が,デモや同盟休校の挙にまで出るという生々しい差別の実態を告発した「あつい壁」(監督/中山節夫・1970年)では,あえて登校を敢行する小学生たちの姿を描いた.劇中のセリフを借りれば,登校することによって「村八分」にされることは明白だったのであり,この小学生たちこそ映画史における「差別を許さない力」の体現者であった.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.