Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』―ケアすることとされること
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.1152
発行日 2001年12月10日
Published Date 2001/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109648
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『雨ニモマケズ』は,宮沢賢治(明治29年~昭和8年)が没後残した手帳の中に綴られていた詩で,わが国の近代文学史上,最も有名な詩の一つである,この詩に対する文学的な評価はさまざまなようであるが,そこからうかがえるのは,宮沢賢治がすぐれてケア的な人間であったという事実である.
宮沢賢治は幼少時から,友達が怪我をすると「いたかべ,いたかべ」と言いながら,血と泥にまみれた友達の指を夢中で吸うような子供だったというが,この詩の中でも,「東二病気ノ子供アレバ行ッテ看病シテヤリ西ニツカレタ母アレバ行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ」と,賢治のケア的人間の特質は遺憾なく発揮されている.人は,そこに賢治の優しさを見て,やはり天性のケア的人間であったナイチンゲールやシュヴァイツァーとの類縁性を思い浮かべることもできるであろう.
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