Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
障害児や慢性疾患患児が家族にいることにより患児の同胞(以下,同胞と記す)の生活に変化が生じることが知られている1).例えば,親の関心が患児に集中するために同胞が疎外感を持ったり,疾患の種類によっては同胞が社会的偏見に出会ったりすることがある.また,同胞が患児の日常生活の介護に直接関わる場合もある.その結果,同胞のなかには健康・情緒・行動に問題を生じる者がある2).
同胞のストレスを減らすためには,患児の疾患についての情報を同胞に十分に提供することが,効果的であることが報告されている3).米国では,医療・教育の専門職者が同胞を対象としたグループワークを主催し,患児の疾患とその対処方法についての情報提供を行うと共に,同胞同士の交流の場を提供している4).しかし,わが国では,同胞が患児の障害や疾患についてどの程度理解しているのかを客観的に把握した報告は見当たらない.
本研究の目的は,第1に,同胞は患児の疾患を誰から説明され,どの程度理解しているかを明らかにし,専門職者による同胞に対する情報提供に資することである.第2に,同胞が患児の疾患を理解している場合に同胞の適応状態が良いことを検証することである.
本研究の特徴は以下の3点である.
第1は,調査対象を同胞にしたことである.同胞の適応状態や患児についての理解度は,同胞自身の回答が最も信頼できるためである.実際に,母親は同胞に比べて同胞の適応状態を低く評価すること5),患児の疾患についての説明の有無について母親と同胞の間で回答に食い違いがあることは報告されている6).
第2の特徴は,小児がんや糖尿病などの慢性疾患と知的障害を伴う神経疾患群の間で同胞による疾患についての理解度と同胞の患児への適応状態を比較したことである.知的障害児の同胞と慢性疾患患児の同胞は共通する悩みをもつと推測されるが,それぞれ教育と医療の専門職により独立に研究されており,比較されたことはなかった3,5).本研究では,患児の疾患の種類,特に,知的障害の有無により同胞の適応状態に違いがあるか否か,患児の疾患についての理解に違いがあるか否かを検討する.
第3の特徴は,健康・情緒・行動における問題が顕在化していない同胞を対象にしたことである.家族に患児のいる生活にうまく適応しているように見える同胞の適応状態,患児の疾患の理解度,および両者の関係を明らかにすることは,同胞に対して予防的に早期介入を行ううえで重要であると考えられる.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.