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はじめに
近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy;NIRS)は,近赤外線の吸光度特性を利用して組織内の酸素動態を非侵襲的かつ連続的に測定する臨床検査法であり,近年,手術中の脳酸素動態の監視1),閉塞性動脈硬化症患者の筋内虚血の判定2,3),スポーツやリハビリテーション医学における筋内酸素動態の測定4)に応用されるようになった.NIRSで使用する700~900nm付近の近赤外線は,可視光線とは異なり組織透過性に優れ,ヘモグロビンなど限られた物質に吸収されやすく,さらに酸化ヘモグロビン(oxy-Hb)と還元ヘモグロビン(deoxy-Hb)では近赤外線の吸収が異なるという特性がある.したがって,生体に波長の異なる2種類の近赤外線を照射すれば,組織内の2種類のヘモグロビン濃度を算出することができる.
1977年,Jobsis5)はネコやヒトの頭部に近赤外線を照射して吸光度の変化を捉え,1992年,Chanceら6)はNIRSを運動時の骨格筋の酸素動態の研究に応用できると報告した.本邦でも1993年,浜岡ら7)が外側広筋の酸素動態の指標として運動後の回復時間の意義について報告した.弘原ら8)は,ramp負荷法を用いて自転車を駆動させNIRSで筋内酸素動態を測定すると,ワットあたりの酸素濃度低下率(NIRS slope % watt)と呼吸閾値や最高酸素摂取量との間に正の相関があると報告した.
NIRSは簡便で,非侵襲的かつ連続的に筋内酸素濃度の変化を測定できるという利点がある.しかし,リハビリテーション医療の現場で廃用性筋萎縮の評価として使用可能かどうか,また筋内酸素動態と筋仕事量や持久力に関連はあるかなどについては,まだ十分な検討はなされていない.
そこで今回,われわれはramp負荷法を用いて自転車を駆動させ,外側広筋の筋内酸素動態をNIRSで非侵襲的に連続的して測定し,測定値の再現性を確認した後で,筋仕事量や全身酸素摂取量との間に有意な関連があるか否かを明らかにすることにした.
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