Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
手の外科領域におけるハンドセラピィでは,スプリント療法は重要で欠かせないものである.スプリントには,大きく分けて2つのものがある.一つは身体部位・関節固定や支持,保護の目的にて作製される静的スプリント1)と,もう一つは筋の代用・補助,関節運動の矯正・保護・支持,関節拘縮の改善などを目的とする動的スプリント1)がある.
動的スプリントは,アウトリガーからスリングにて指を牽引し,必要に応じて指を屈曲(運動)させるものであるが,その指の牽引における牽引力や牽引方向は重要で,適切な牽引力と牽引方向は多くの文献2-4)にて報告されている.また,牽引力や牽引方向が適切でない場合の指への血流循環や指関節への影響についても報告4-7)されている.
しかし,こうした動的スプリントにおける指の牽引力や牽引方向は,指を伸展保持した状態にて調整されており,指を屈曲した状態では適切な牽引力と牽引方向は保たれなくなる.多くの場合,指を屈曲すると牽引力は増加し(強くなり),また牽引方向は適切とされる指節(骨)に対して90度を保てなくなり,より鋭角になる(図1).そして,この増大した牽引力は,指の屈曲時には指関節腔を狭小化させるように働く(図1右).これは関節拘縮のある関節では,靱帯や関節包は柔軟性を失っており,こうした関節腔(間隙)を狭小化させる外力下での運動は関節への負担と周囲の組織への影響が考えられ,また関節拘縮予防にての運動においても,このようなアライメントを崩すような外力下での繰り返しの関節運動は問題があるものと考えられる.
筆者は,以前よりこの動的スプリント(指牽引タイプ)には,指の牽引力と牽引方向が指の伸展保持時のみにて調整され,屈曲した,あるいは屈曲するときにはほとんど調整されないことに問題を感じていた.今回,筆者はこうした従来型の動的スプリント(指牽引タイプ)の問題点を解決すべく,新たなタイプの動的スプリント(牽引支点可動式ダイナミックスプリント―白石式)の考案,試作を行ったので,そのメリット,デメリットについて紹介する.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.