書評
高口光子 著―いきいき・ザ・老人ケア―生活ケアの現場から
大田 仁史
1
1茨城県立医療大学付属病院
pp.1054
発行日 1998年11月10日
Published Date 1998/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108800
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本書の1部ドキュメント/なるほど・ザ・老人ケアの1章・ザ・遊びリテーションの「不幸くらべ」は仲間内ではもう古典的な語りぐさになっているほど有名である.「これをグループでハウツウとして利用されると危ない」と著者も述べているが,私もそう思う.やってもうまくいかなかったという話を幾度か聞いたが,そうだろう.というのはすべて著者の「感性と表現力」で築いた老人との関係の中ではじめて可能な手法だからである.
すべてにおいて感じるのだが,意識しているしていないにかかわらず,著者は老人に対して言語としぐさで自分の想いを強力に発信する.著者と出会ったその瞬間,老人は強いインパクトを受け心を動かされる.ときには鉄砲弾のような口調で,ときには体を微妙に動かし,表現しがたい速度で変化する表情によって著者が作り出す独特の状況や場面は,著者だけがもつ才能によってしか生まれないであろう.老人と「居る」その「場」を著者は思いのままに創造し,その中に老人を誘い込む.老人が主体ではあるが実は彼女の「治療の場」の創造なのである.老人はそこで癒され元気をとりもどす.
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