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はじめに
中心前回下部を中心とした病変により1),発話に限定した障害が生じることが知られている.この病態は発話,復唱,音読に異常があり,書字,聴覚的理解,読解は保たれており,純粋語唖と呼ばれる.Lecoursらは1)その特徴を,言語レベルでは言語理解が正常であるのに反し言語表現が冒され,言語表現のレベルでは書字表現が正常であるのに反し口頭表現が冒され,口頭表現のレベルでは統辞形態的レベルおよび音韻レベルの表現が正常であるのに反し音声レベルの表現が冒され,「三重の解離」があると記載している.
この発話障害はaphemie(Broca,1861)2),aphemia(Bastian,1898)3)を始めとし,その後,anarthrie(Marie,1906)4),reine Wortstummheit(Wernicke,1906)5),aphasie motrice pure(Dejerine,1926)6),phonetic disintegration(Alajouanine,1939)7),cortical dysarthria(Bay,1962)8),apraxia of speech(Darley,1967)9)などとして報告されている.その名称の多さが示すとおり,概念や発現のメカニズムについては異論があるが,いずれもその純粋型では発語のみが障害され,書字,文字言語理解は正常である点で共通している.本邦では純粋語唖10),失構音11,12),発語失行13),発話失行14)などの名称が用いられているが,本論文では純粋語唖の用語を用いることにする.
一般に純粋語唖の言語症状は一過性のことが多く15-17),左大脳半球の障害ばかりではなく両側大脳半球または右大脳半球障害の報告もある18-22).われわれは左大脳半球の障害で長期間発話障害が持続し,口腔顔面失行が発話障害と関連していると推察される純粋語唖の2症例を経験したので報告する.
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