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はじめに
建設省はハートフル・ビル法の一貫として,このほど,「高齢者,身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(法律第44号)」を作った(平成6年6月).これは街づくり法の基幹となるものである.
この法律の具体的裏打ちとして,その判断基準も付加された(平成6年9月).これは,みんなが当然守るという基礎的基準と,より好ましいレベルの誘導的基準に分けられる.基礎的基準は義務だが,誘導的基準は,これを満たすと法的規制緩和が得られる.つまり税制や建ぺい率や補助金などの優遇処置が得られる.
この判断基準は2つの表現,つまり寸法を明示した基準表現と,“識別しやすいものとする”という性能基準の2つの表現で示されている.
さらに,細部を示し,設計例示をした“高齢者・身体障害者などの利用を配慮した建築設計標準”略して,“設計標準”も平成6年10月に出された.これら一連の作成に筆者も携わり,特に設計標準作成の主査を勤めた.
さて,このところ全国の地方自治体では主に基礎的基準を自治法で法制化し,守らなければ建築の許可が下りないという仕組みを作る傾向を示してきた.
近年,火災時に高齢者が逃げ遅れて焼死体となるニュースがあとをたたない.また,日常ちょっとした段差にもつまずき,転倒,骨折,入院,死亡の数も,高齢者がやはり圧倒的に多い.これらの原因を,高齢者の動作が遅いから,つまり,加齢による筋力の低下をその原因としてきたが,果たしてそれだけであろうか.実は危険を察知し,行動の方向を定めるための知覚の働きにも大きな原因がある.
ここでは見え方,聞こえ方の特に警告用に使われる色や音が高齢者にはまるで見えなくなることを述べ,やさしさとはその人の身になってこそはじめて理解されるという観点から,そのシミュレーションを筆者らの研究から解説し,今後手直ししていきたいハードの各部分について触れる.
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