集中治療室におけるリハビリテーションの役割

The Role of Rehabilitation Medicine in ICU.

はじめに

　「心疾患患者のマネージメントでのリハビリテーション医の役割」という論文に，リハビリテーション医の草分けともいえるGordon¹⁾は，面白い挿話を取り上げている．今でいうCCUから出てきた同僚の医師に「ここにも君の患者がいるのか」と声をかけたら．同僚が彼にいかにも関係ないといった調子で「私の心疾患患者には，運動訓練は必要ないんだよ」と言われたのがきっかけで，心疾患のリハビリテーションが始まったと書いている．リハビリテーション医としてGordonが感じた屈折した気持ちは，小生にはとてもよくわかるような気がする．いま抱えている重篤な患者はリハビリテーションどころでないんだとあからさまに言われて，ガックリするとともにあたまにきて彼はCCUでのリハビリテーション・プログラムをやり始めたのに違いない．

　それから30年あまり過ぎているのに，わが国では，リハビリテーションに対して彼の同僚と同じように認識の甘いICU関連の医師が多いのではなかろうか．リハビリテーション専門医の中にも，CCUならともかくも，ICUにまでリハビリテーションが手を出す必要があるのかと疑問を抱くむきもあろう．

　当院でわれわれがICUのリハビリテーションに携わってきたのは，呼吸器外科で高齢者肺癌手術に合併する肺感染症の予防をリハビリテーションで行ってほしいという要請に基づくものであった．われわれの経験を通じてICUでのリハビリテーションの役割について述べてみたい．