一頁講座 イラスト・神経学的テスト(12)
感覚系の診かた―2.二次(複合)体性感覚
岡島 康友
1
1東京専売病院リハビリテーション科
pp.993-995
発行日 1990年12月10日
Published Date 1990/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106403
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はじめに
末梢受容器に発する感覚情報は周波数変調されて感覚伝導路を上行し,中枢において下行系の抑制・促通の影響も受けながら,他の感覚情報とともに補償されつつ統合される.同じ中枢内感覚路でも,下位での障害と比ベシナプスを多数介した大脳皮質以上での障害では単独の感覚種の障害要素は減弱され,より複合的な感覚障害を呈する.例えば,中心後回では病変に対応する身体部位の全体性感覚は一時的には障害されるが,やがて補償回復する.しかし,触覚定位,2点弁別等の障害は残存する.中心後回より高次に位置する頭頂連合野病変では触れた物体あるいは身体の空間的抽象能力が障害される.
感覚(sensation)とは意識下において定義されるが,知覚(perception)という言葉には感覚の解釈,過去の経験との対照といった内容が含められる,また,認知(cognition)といった場合には対象の把握という意味合が強い.これらは厳密に区別されうるものではないが,感覚≒知覚→認知と階層化し,前2者が個々の感覚のセンター(仮想的)に至った時点で生起されるもの,後者はさらに注意,記億,左右体性感覚間あるいは体性感覚以外の感覚モダリティなどの情報を含めて統合された結果起こる内容と解釈してもよかろう.
本稿では,厳密な区分は難しいが,複数の体性感覚の統合過程で生起される二次(複合)体性感覚について触れる.
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