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はじめに
免疫とは,元来,生体がある感染症に罹患した後は再び感染が発症しにくくなるという,生体側にとって有利な状態を指していた.しかし,近年,感染防御のみでなく,免疫反応により生体側に不利に働く場合が存在することがわかった.すなわち,不利に作用した状態はアレルギーと呼ばれ,免疫アレルギーにより発症する病態を免疫アレルギー疾患ないし免疫疾患とされた.
このように,免疫機序や免疫反応が病態形成に係わる疾患をアレルギー疾患や免疫疾患と呼ぶ.したがって,免疫反応は常に生体に有利な方向で働くとは限らず,生体は自己(self)と非自己(nonself)を識別し,非自己を排除して自己の恒常性を保とうとする一連の生体反応を有しているが,その生体反応が免疫反応である.そして,この免疫反応の発現形式は,血液や組織液などの体液中に存在する液性抗体(ヒトの場合,IgG,IgA,IgM,IgD,IgEの5種類の免疫グロブリン)を介して起こる液性免疫(humoral immunity)と,液性抗体とは無関係にリンパ球やマクロファージ(macrophage: Mφ)などの細胞を介して起こる細胞性免疫(cellular immunity)に大別される.
液性免疫は体液性免疫とも表現されるが,免疫応答時間は迅速で数分~数時間である.例えば,即時型反応の典型例であるアナフィラキシー,蕁麻疹(アレルギー疹),アレルギー性枯草熱(鼻炎),アレルギー性結膜炎(春季カタル),アレルギー性喘息(気管支喘息)などがある.
また,細菌のオプソニン処理および融解,ウイルスや毒素の中和も短時間に反応するものであり,血清病に代表される免疫複合体病やある種の自己免疫現象もこれに属する.
一方,細胞性免疫は遅延型反応と呼ばれ,反応時間は相当な時間を要し,何日も必要とすることが特徴である.
このように,免疫アレルギー反応を基盤として発症するものは免疫疾患として総括されるが,現在,相当数の疾患がこの範疇に含まれる(表1).
免疫反応の型と疾患を解説する前に,その主役であるリンパ球について触れる必要がある.
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