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Ⅰ.序論
神奈川県身体障害者更生相談所(所管人口330万人)が,昭和61年度に取り扱った,脊髄性障害者の身体障害者手帳発行件数は145件で,外傷性脊髄損傷,脊椎症,その他の疾患が各々相半ばしている.疾患がかなりの数を占めているが,この内腫瘍が17件,血行障害が5件,脊髄性筋萎縮症が4件,筋萎縮性側索硬化症(ALS)が2件,脊髄空洞症が2件,その他9件である.内訳をグラフに示す(図1).外傷以外の脊髄障害の原因としては,結核が54%を占めるという発展途上国の調査1)もあるが,メルボルンのPenington2)は非外傷性脊髄障害の37%が腫瘍,19%が血行障害,20%が一次性神経疾患,15%が脊椎疾患と報告している.
このように脊髄疾患も,外陽性脊髄損傷と比較して決して少ない数ではなく,各々の疾患の特性に従ったリハ医療を実施する必要がある.しかしながら,これらの疾患に対する看護・保健技術については論じられることはあるが,リハ医療の方法論を構築する試みは,特に我が国では非常に少ない.この理由としては,原因疾患が非常に多岐にわたるために各々の経過が異なり,方法論を一律には論じられないことがまず考えられる.また,この領域は神経内科の治療対象として,リハ医と協力態勢を組む機会が得られないことも,理由の一つなのかもしれない.しかしながら,脊髄性疾患の機能障害は改善の期待できるものも稀ではなく,逆に進行性のものに対しては,機能と能力の低下を防ぐあらゆる手段を活用し,さらに心理学的援助や家庭と社会環境を整備し,社会資源の活用を検討し,まさに包括的・総合的なアプローチを必要とする.これはリハ医療のお家芸といえる領域だといってよい.脳卒中片麻痺のリハ医療が大きく発展してきたように,これらの疾患に対するリハ医学方法論も確立されるべきである.そのためにはリハ医の側からの積極的な働きかけも必要であろう.
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