書評
リハビリテーション医学講座(第4巻) 中村隆一 編―神経生理学・臨床神経学
才藤 栄一
1
1国立療養所箱根病院
pp.357
発行日 1986年5月10日
Published Date 1986/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105592
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このシリーズは,待望のPT・OT向けの教科書である.その中で神経生理を中心に扱ったものが本書であり,編者は,リハビリ分野の神経生理では第一人者の中村隆一教授で,紹介の必要はないだろう.
リハビリにおける神経生理は,運動,認知,学習など従来の神経学の教科書ではあまり重視されていない(というよりは不明確な点が多いため記載が少ないのだろう)部分が,却って重要となっている.つまり,従来の,医学生が習う神経学の教科書では,PT・OTの学生にとって,役に立たないのである.その意味で本書の意義は大きい.内容は,大きく2編に分かれており,第1編が神経生理学,第2編が臨床神経学となっている.第1編では,神経系の構造,細胞膜の性質から,筋肉,反射,そして行動の制御まで述べられており,また第2編では,古典的な神経学診断から,運動発達にまで及び,リハビリで必要な神経生理,臨床神経を全て網羅してある.記載は簡潔だが,例えば神経因性膀胱では自己導尿法に触れるなど,重要な点が押えてある.ただし,読み物としての面白さは,その性質上なく,適切な講義を必要とするだろう.
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