Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
脊柱側彎症の手術的治療の目的としては,1)脊柱変形の進行を防止すること,2)美容的な意味での変形の改善,3)心肺機能の改善と悪化の予防,4)腰背部痛に対する治療,5)すでに存在あるいは予測される神経合併症の改善と悪化の防止,6)体幹バランスおよび安定性の獲得などがあげられる.手術的方法に関しては,1960年Harrigton4)が脊柱後方から側彎を矯正,固定するためにRod Instrumentationを使用することを発表して以来,飛躍的に進歩し,全世界に広まった.それ以後,種々の技術的改良および手術器械の開発が進められ現在でも標準的術式として用いられている.
そして1973年メキシコのLuque9,10)により発表されたSegmental Spinal Instrumentation(SSI)は,各椎体椎弓下にそれぞれワイヤーを通しL字型のロッドに締結するという新しい理念に基づいた画期的な脊柱後方術式であり,Harrington法との組合わせ手術も行われるようになり,観血的治療体系,及び術後のリハビリテーションに大きな変革をもたらしてきている.一方これら脊椎後方からの手術法とは別に,1965年A.F.Dwyer3)はケーブル,ステーブル,スクリューを使い脊柱前方部分に直達して脊柱変形を矯正,固定する方法を発表し,これがAnterior Segmental InstrumentationのDwyer法であり,K.Zielke14)は1975年独特なロッド,スクリュー,derotatorなどの器械を使い効果的に椎体の廻旋をとると同時に側彎の矯正・固定と前方術式による後彎の発生を防止するVentrale Derotation Spondylodese(VDS)を開発し,現在では前方術式としてはZielke手術が一般的となっている.このように手術術式の改良と各種Instrumentの開発およびその併用療法により,側彎症手術治療体系は大きく変りつつあり,各症例ごとに最適な方法を選択することが重要である.この際患児,両親とよく相談しつつ術後の後療法,学校や家庭生活など社会生活への復帰,ADL上の問題につき懇切に説明を加え精神心理面の影響をも考慮し,常にリハビリテーションを念頭において手術の決定がなされるべきである.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.