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はじめに
整形外科領域においては,運動・支持器官としての四肢における疾病を診察し,診断を行わなければならない機会が非常に多い.現病歴を聞いたり,皮膚および皮下組織を介しての理学所見を得ただけで診断が行える場合も少なくない.しかし,多くの場合は,診断をより確実なものとするために,通常は単純X線写真を必要な数だけ撮影する.もし病変が骨に起因している場合や,骨におよんでいるような場合には,骨がカルシウムという自然の陽性造影剤を含んでいるために,X線透過性の悪さがさいわいして,多くの情報が得られ,かなりの確率をもって診断を行うことが可能となってくる.病変が軟部に限局しているものであった場合は,単純X線像によって得られる情報はわずかなもので,目を凝らしてみても軟部の腫脹が認められるくらいのものである.
これは通常用いられている断層撮影法(tomography)についても同様で,軟部病変については大した情報が得られないが,骨病変の場合にはより詳細に,三次元的に病変を把握しようとするとき,二次平面である縦断面像の積み重ね枚数を増やすことにより,ギブス装用時であっても,他の領域におけるより多くの情報が得られる.
また体軸に対して水平方向の情報,つまり輪切り像を得る回転横断撮影法(rotatory cross section radiography)が本邦においては高橋4)により完成,実用化されたが,断層撮影法に比べ,更に劣化された像しか得られなかった.これらはいずれもX線フイルム記録方式であり,そのコントラスト描出能に限界があるためで,各々の組織の微妙なX線吸収度の違いを表現するのは困難だからである.しかしながら,ここで得られた理論は更に改良され,コンピューター断層撮影法(computed tomography:以下CTと略す)として診療の場に登場してきた.
CTは1973年Hounsfield2),Ambrose1)によって脳外科領域で臨床応用されたのが始まりである.翌年には全身用CT装置が開発された.CTは従来の諸種診断法を補う有用な方法として認められ,整形外科領域においてもその応用が注目されている.
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