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まえがき
リハビリテーションと法体系というテーマのなかで,障害児童に関する法体系について執筆を依頼されたので,日常具体的に活用される法制度について説明を加えることにする.さらにこの説明を進める上で,出生前後から成人に至るまでのライフサイクルに沿って法律制度などを述べる.
一般に障害児童の取扱いは,主に児童福祉法(昭和22.12.12.法律164号:以下児福法と略す)のなかに位置づけられている.その理念は児童憲章(昭和26.5.5.宣言)とくに,11条に示されており,背景は,日本国憲法にある.
また心身障害者に対する基本理念は,心身障害者対策基本法(昭和45.5.21.法律84号)に在り,障害者の定義もその中に述べられている.
障害児は,身体障害児ならびに精神障害時に大別されるが,後者に関しては精神薄弱児を中心に述べる.児福法における身体障害児のなかには,肢体不自由を主とし,盲・ろう・唖,虚弱児などあげられているが,それらの定義は児童福祉施設の分類にあたって述べられているに過ぎない.すなわち児福法ではそれぞれの定義はかならずしも明確とはいえない.
ところが身体障害者(18歳以上)になると,身体障害者の定義が,身体障害者福祉法(昭和24.12.2.6.法律284号)第4条に定められている.すなわち法別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものとなっている.この手帳を所持することが,身障者福祉の恩恵を受ける基本条件となっている.
また精神薄弱者福祉法(昭和35.3.31.法律37号)には,精神薄弱者の定義は見当らず,療育手帳交付には,障害の程度(重度A,その他B)を記載することになっている.
この手帳を基礎に精神薄弱者の福祉が展開されている.
ひるがえって昭和56(1981)年は,国際障害者年と決議され,「障害者の完全参加と平等」というスローガンの下に運動が展開された.国連の障害者という対象は,わが国における考え方より広い範囲をとらえているようである.それに続き国際障害者年行動計画が公表され,わが国においても昭和57年1月国内長期行動計画の在り方について,中央心身障害者対策協議会が,内閣総理大臣宛意見を具申している.これを受けて国際障害者年推進本部が,“障害者対策に関する長期計画”を公表した.これと相前後し民間の国際障害者年日本推進協議会,および地方自治体も長期行動計画を発表している.
これらの計画は,制度化され予算的裏付けを得て実現することは,今後の大きな課題といえる.
この長期計画のなかで,保健医療,教育・育成の在り方については,障害児童とのかかわりが深いので,現行制度と対比しながら紹介したい.
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