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Ⅰ.多様化した現代行政の中で
リハビリテーションの法体系と一口に言っても,これにかかわるわが国の現状は,かなり多様化されているので,どこまでをそのジャンルとして把えるべきか,人によっても異ってくると思われる.
法体系が多様化しているということは,それだけわが国の行政が現代化しているということになる.これは先進資本主義諸国において等しくみられる現象で,わが国に限ったことではない.しかしこのように多様化して来た推移は,どこの国でもこの100年そこそこの経過のうちに起ったことであった.資本主義法制度の先駆的役割を果したといわれる英国においても,当時自由放任政策を目指し,経済を含め,個人の活動には国家は干渉しないことをその理念としていた9).このような体制を夜警国家と称される場合もある.行政を治安維持に限定して行こうという理念を表現しているわけであるが,この考え方は現代においても行政の中に生かされている場面がある.たまたま国際障害者年を記念して東京で開催された国際リハビリテーション交流セミナーにおいて,「リハビリテーション行政における専門家の役割」というシンポジウムが企画され,私と共に参加したコメンテータのSim-Fook Lam8)(香港の厚生次官にあたる人)から「香港政府の全般的政策は自由放任主義を取っており,企業の自由にまかされているのである.これは“法律や条令は制約をもたらし,制約は自由を破壊し,意欲を減退させ,発明・工夫を沈滞させる”との信念に基づいているのである」という表明が行われ,英国理念の継承を感じたのであった.しかし同時に氏はリハビリテーションを行政に展開して行く場面における多くのジレンマについても話題を提供し,この問題はどこの国でも同じ難しさがあることも理解し得たのである.
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