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まえがき
出月 康夫
pp.781-782
発行日 1979年6月20日
Published Date 1979/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207176
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これだけは知つておきたい
手術の適応とタイミング--注意したい疾患45
手術は治療手段の一つであるが,同時に生体にとつては大きな侵襲となる.手術という人為的な生体侵襲が治療手段として許されるのは,生体にとつてさらに有害な疾病の原因が手術によつて取り除かれ,あるいは少なくとも改善されるからに他ならない.したがって,外科医は手術を治療法として選択するにあたつては,それがはたしてその患者にとつて最善の治療法であるかどうかを常に考えていなければならない.手術によつて患者が受ける利益と,手術によって患者が蒙る損失とを秤にかけることは勿論,手術の効果が最大に発揮されるように,また手術による侵襲を最小に留めるような配慮が必要である.
このような意味からは,手術治療は良性疾患においてはつねに次善の策である.手術のように生体を傷つけることがない,より侵襲の小さい治療法が他にある場合には,いさぎよく道を譲らなくてはならない.このようなことを十分に考慮した上でなお一般的には手術が最良の治療手段であると判断された場合には手術が必要である.しかし,この場合にもさらにもう一度個々の患者について,手術の適応とタイミング,そして術式とを慎重に検討しなければならない.疾患は同一であつても,病人は一人一人が別々である.画一的な治療方針,定型的な術式は治療をある一定の水準に保つ上には効果があろうが,個々の患者にとつての最善の治療には繋らない.手術にあたつては"tailored operation"を心掛けるべきであろう.
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