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今月は特集として「リハビリテーションと臨床心理」をおとどけする.名医という言葉はいまやなじみの薄いものになりつつあるが,むかし,名医といわれた方々は系統的な学問としてはいざしらず,実際的な面で臨床心理に通暁しておられたことと思われる.医療の上で心理面の比重の極めて大きいことは周知のことであるが,リハビリテーション医療の上では,身障者が心理学的問題点を呈することがしばしばあるので,その比重は殊更に大きい.
本特集では先ず三沢義一氏が総論として心理学的評価について述べられたが,リハビリテーションの分野における心理学的評価は未だ問題が多く,今後の体系的な評価技法の開発の必要を指摘された.ついで上田敏氏が障害の受容について問題の掘下げを行っている.片麻痺の廃用上肢について何時その宣告を下すかに,常に悩まされている私共にとっては極めて関心の深い問題である.つづいて永井昌夫氏が障害者スポーツの心理的効果について,実施に関する方法や留意点を含めてまとめられた.十数年前ニューヨークで,「ラスクさんは患者にバスケットボールをさせて教授になった」というジョークをきいたことがあるが,しかし,初めて身障者にバスケットボールをさせたラスク教授の慧眼には今更ながら心から敬意を払いたい.次には大橋正洋氏がリハビリテーションと行動療法について,アメリカでの経験を基にされて書かれた.行動療法とはいかにも難解なもののようであるが,内容は誰でもが行いうることであり,しばしば患者を好ましい方向ヘリードしていくことが可能となる.是非一読をおすすめしたい.最後に内須川洸氏が言語治療における心理学の役割について述べられた.現在,言語士の身分法の確立が急がれているが言語上の教育の中に占める心理学の比重の大きさを指摘されている.
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