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はじめに
世界の隅々で障害者の市民としての生活内容が豊かにされるよう世界を作りかえていくこと,これこそ国際水準で考えられるべき社会リハビリテーションの課題であり,来る国際障害者年の目的でもある.
障害者のリハビリテーションをいかに達成していくかは,世界各地,各国における経済や文化的事情によってさまざまの異なったありかたが存在するが,世界各国のとりくみの中に共通して存在する理念は,障害者を特別な施設にかくまうのではなく,“自分たちの一般的な社会生活の中でいかに共に生活していくか”という“社会統合”の考え方である.
心身障害者を一人の市民として,一般の社会で受け入れるという概念は,国連人権宣言(1948年)の“すべての人間は生れながらにして自由であり,人として尊ばれ,諸権利を与えられ,平等である”という人間平等の考え方に立脚し,国連「障害者の権利に関する宣言」(1975年)が認知した“障害者ができる限り諸々の活動分野において,その能力を発揮できるよう援助し,かつ,できる限り普通の生活に統合できるよう促進する必要性”に基づいている1)といえる.
この考え方の方向で,国際障害者リハビリテーション協会に加盟する国々は,1970~1979年の10年間を,「リハビリテーションの10年」として障害者の権利援護のためのキャンペーンを障害者運動の支援や地域セミナーの実施等を通して,一般住民はもとより,政府首脳陣に対しても行って来た.しかし,すべての国々で,障害者の社会受入がスムースに行われたわけではなかった.ことに政局不安定で,新しい社会問題を生み出している国々,開発の遅れた国々では,関心は社会の少数者である障害者まではとどかないというのが実情で,障害者の問題は政策的に手がつけられず,とり残されていることの方が多い.
先進工業国と開発途上国との障害者の権利保障水準の大きな格差,いわば障害者リハビリテーションにおける南北問題の認識が,1981年に開幕する国際障害者年の世界運動の強力なアクセルとなったのである.
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