特集 リハビリテーションにおけるハリの応用
中国における針治療の現況
陣内 一保
1,2
1神奈川県立こども医療センターリハビリテーション科
2第2期日本医師針灸研修班
pp.830
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104068
- 有料閲覧
- 文献概要
わが国では,針治療は医師の同意のもとに針灸師が行う以外は,保険診療にとり入れられていない(労災保険では認められているときくが).中国では,社会保険に相当する合作医療制度があり,1人当り年間1元(130円)を拠出すれば,すべての医療は公費で受けられる.この合作医療制度の中に針治療も組入れられており,1回の治療費(公費)は,用いた穴位の数に関係なく,0.1元である.このように医療における針治療の位置づけが,わが国と中国では大きな相違がある.
中国では,都市部においては各地区の病院,区の中心病院,市立病院,医科大学付属の病院と各ランクの病院が設けられ,農村部では人民公社に衛生院がある.これらの病院・衛生院にはすべて針灸科が独立の診療科としておかれ,そのほとんどが専有の病床を持っている.また中医学を主体とする「中医院」も各省に1ヵ所以上あり,ここでは針治療は更に比重が大きい.針灸科外来では,治療用ベット3~4台,坐位で治療するための木製の椅子2~3脚がおかれた室が3~4室あり,患者が指定された時間に次々と現れ,治療が終ると次回の予約をして職場や家庭に戻っていく.患者の流れはスムースで,各室に医師2人,助手(看護婦)1人が配遣され,医師1人当り1日50人程度を治療する.暖かい季節には患者が多く,冬は少ない.これは各家庭の暖房設備が乏しく,患者が厚着をしている季節には,これを脱いで針刺をするのを避けるためとの説明であった.患者が増加すると,置針も15分のところを10分にするなど,やむを得ず1人当りの治療時間を短縮して消化するという.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.