小特集 東洋医学とハリ麻酔
針麻酔,針治療の理論と実際
池園 悦太郎
1
,
永山 薫造
1
,
吉田 種臣
1
,
渡辺 嘉彦
1
,
大浜 和憲
1
,
下地 恒毅
1
Etsutaro Ikezono
1
1東京医科歯科大学医学部麻酔科
pp.755-762
発行日 1974年11月10日
Published Date 1974/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205096
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.東洋医学とは
中国医学は今から4,000〜5,000年前にfolk medicineとして発達してきたものと考えられている。中国医学の古典は紀元前400年頃に生存したといわれる黄帝が書いた黄帝内経素問霊枢があり1),現在に到るまで中国医学あるいは東洋医学のバイブルとして用いられていることは驚くべきことである。この時代においても中国では,体のある器官または機能に異常が起こると体表面のある特定の場所が過敏となり,その過敏となる部位と,特定の器官と一定の関係をもつことが示され,これが複雑な哲学的仮説で説明されてきた。
ある特定の器官の疾患に際して出現する過敏な点が,体の表面の一定の線をもつて結ばれ,しかも大部分は左右対称性の線すなわら経絡をもつて体の前面,後面,または四肢を流れているとされ,体の背面を陽経の経絡が頭部より足方に流れ,また前面を陰経の経絡が足先より顔面に向つて流れているものとした。これらの経絡の大部分は器官名をもつて呼ばれ,肺経,大腸経,胃経,心経,小腸経,膀胱経,腎経,胆経,肝経は,西洋医学でいう各器官とほぼ一致するが,脾経は膵臓,胃腸および肝臓に関係する。三焦経は耳,眼,肩,肘,胸壁と,心包経は,胸部,胃,心,神経,循環系と関連する2)(表1)。
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.