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はじめに
腰痛を主訴として整形外科を訪れる患者は非常に多く,全整形外科疾患の1/4にも達する.たとえば,当教室の一関連病院での入院患者について調査した結果では,昭和48年1月より昭和51年6月までの3年6ヵ月間の入院患者数1,209名のうち腰痛患者は211名(17.5%)であった.外来を訪れる腰痛患者のうち入院治療を行う患者はほんの一部であり,入院患者のみをみても腰痛患者の占める割合は大きい.入院患者でも手術療法の対象になっている患者は211名中13名(6%)であり,腰痛を主訴とする患者のほとんどは保存的に治療されている(表1).
手術療法の重要さは今さらいうまでもないが,これはほんの一部の患者に適応されるにすぎない.これに対して腰痛患者を取り扱う上での保存療法の占める位置は高く,その重要性があらためて認識される.
腰痛症はその原因がさまざまであり,また患者個々の社会的背景も異なる.治療に当り,その原因により最も適切な治療法をとることは当然であるが,多くは原因不明のまま「腰痛症」の診断のもとに保存的療法が施行される.
腰痛の原因を椎間板,椎間関節,軟部組織あるいは腰仙部の奇形,分離症などに求めることができるにせよ,多くは加齢的変化を伴い腰痛を起していることが多く,二脚立の人類にとってある程度さけがたいデメリットであるとも考えられる.また,場合によりどこから病的でどこまでが生理的変化かの区別のつきにくい面もあり,腰痛症の治療をより複雑なものにしている.この意味からいかに腰痛を予防していくかを患者に指導することが保存療法の最も重要な点である.手術療法といえども,手術によりドラマチックに症状が消失し,将来全く不安を残さない例は少なく,手術により治療されたものには何らかの弱点を残していることが多い.いいかえれば手術療法は耐えがたい痛みを耐えられる程度に変え,その後いかにコントロールしていくかは医師の適切な指導と,患者自身の努力が必要である.
腰痛症は心因性症状の身体的フォーカスに最もなり易いものの一つで,Luck9)によるとすべての腰痛の25~50%以上において心埋的因子がそのdisabilityの原因になっていると述べている.このことが腰痛症をより複雑にしており,患者の終局の社会復帰のためにはリハビリテーションの総合的アプローチが必要であることはいうまでもない.
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