巻頭言
重視したい患者とスタッフの心の通い
渡辺 英夫
1
1熊本大学医学部整形外科教室
pp.175-176
発行日 1976年3月10日
Published Date 1976/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103493
- 有料閲覧
- 文献概要
リハビリテーションの効果は患者と治療スタッフとの心のきずないかんによるといってよく,知識や技術のみではどうしようもないことがある.患者の性格は一人一人違っており,詳細に観察してみると興味がある.それは全くさまざまであり,ときには常識から外れた者がおり興味だけではすまされず,スタッフー同,天手古舞させられることもある.もちろん患者側もわれわれスタッフの色々の性格の違いをひそかに評定していることであろう.
患者のバックグラウンドも種々様々で,職業,地位,教育,経済状態などに大差があったりで,その性格は同じ日本人でも人種が違うように思われることもある.一般に男性患者ではその人の職業によってその程度をおおまかに想像できるので,扱い方もそう困ることはないが,女性の患者でしかも老人の場合は身についている教養にも大きな差があり,外見だけでは推し量ることができず,スタッフー同気をつけないと思わぬ失敗をすることがある.言葉使い一つにしても,地方の方言丸出しの少々下品な言葉でも使った方がお互にしっくりとしてcontactがとれ易いことがあるかと思えば,上流社会の育ちで“ザーマス”言葉でも使っていたのか,われわれスタッフの慣れ慣れしい言葉を嫌って固い殻を開こうとしない女性患者もあり,治療や訓練中にも殆ど無口を通したりする,こんな場合スタッフが早めに気付いておればよいが,そうでない場合は悲劇ともなりかねない.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.