特集 リハビリテーションと心理
進行性疾患をもつ患者への心理的配慮
上田 敏
1
1東大リハビリテーション部
pp.454
発行日 1975年6月10日
Published Date 1975/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103349
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一昔前には「進行性の疾患にリハビリテーションなど無意味ではないか」という声がよく聞かれたものである.最近ではさすがにこのような声は公然とは聞かれなくなったが潜在的にはこのような気分はまだかなりに広く―われわれリハビリテーションに携っている者の間にさえも―残っているのではあるまいか.
たしかに理念の上では,障害の進行をできる限り遅らせ,身心両面の自立性を可能なあらゆる手段で(種々の自助具や介助具をもちいて)できるだけ高いレベルに保とうとすることが進行性疾患のリハビリテーションであるということは解っている.また職業的なリハビリテーションや経済的自立のみがリハビリテーションの目的ではないことも当然であろうとは思っている.しかし現実に,日に日に悪化していく筋萎縮性側索硬化症の男の人や,悪性腫瘍に脊髄を侵された2歳の幼児や,乳癌の腕神経叢転移で一方の上肢が完全に麻痺した中年婦人やらと接していると,時にはやり切れない気持が先に立って,「自分は一体何をしているのか」と自問自答しはじめてしまうこともしばしばである.
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