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いとぐち
血友病患者の関節内に出血が初発したときや長時日の間隔をおいて再出血したときには,出血がかなりの量であっても,局所安静と欠乏因子の補充療法だけで十分治療効果を挙げることができる.しかし,一つの関節に長期にわたって頻回に出血が反覆されるようになると,前記の方法だけで出血前の状態にまで回復させることは容易ではない.
一般に関節内出血は少年期を過ぎると,次第にその頻度を減少し,ことに成人期に達すると,レントゲン像での関節変化や機能障害が進行しているにもかかわらず,出血そのものはほとんどみられなくなるとされている.しかし,症例のなかには必ずしもこのような経過を辿るとは限らず,成人になってもなお出血の繰返しに悩まされる症例もある.
われわれはここ3年来,年長児および成人で関節内出血を反覆し,関節腫脹や局所熱感が長期にわたり持続して,慢性の滑膜炎症状を呈した症例に対して関節鏡検査を実施してきた.外科的侵襲が絶対安全であるという保障のない血友病に対して,小切開を加えてまで本検査の実施に踏切ったのは,以下の理由に基づいている.
1.関節内出血はどのような部位から,どのような状態で起こっているのか.
2.出血を繰返す関節には,それを誘発する特別な変化が存在しないだろうか,もし存在するとしたら局所的な処置法が考えられはしないだろうか.
3.関節内の変化は,出血が初発してからの経過期間や出血頻度によって,どのような影響を受けるだろうか.
4.関節鏡使用に際して実施される関節洗浄は,単なる穿刺法に比べて治療効果―とくに再出血に対する予防効果に期待がもてないだろうか.
今回はこの関節鏡による関節内病変の肉眼的所見を中心に,一部の症例において得られた滑膜のbiopsy所見を併せて検討し報告する.
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