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多彩な経過をたどった脳卒中の1例
(症例検討)
東京逓信病院 竹内 仁・鈴木一夫
10年前より高血圧のあった69歳の会社員が,右の片麻痺を主訴として入院,入院2日前に,嘔気,嘔吐,翌朝起きようとして右の片麻痺に気づく.入院時,傾眠傾向,血圧196/106,白血球数13,000,血沈18mm,弛緩性右不全麻痺,軽度の頸部硬直,右の知覚障害,右下肢の病的反射がみられた.眼底浮腫はなかった.髄液検査では,初圧270,水様透明,細胞数107,蛋白114mg/dlであった.入院後,嘔気,嘔吐,頭痛が出現,意識障害も進行した.入院2日後,吐血,当時の血圧220/110,半昏睡で呼吸やや乱れ,乳頭に軽度の浮腫がみられた.降圧剤・利尿剤等の投与により,入院10日後に意識は改善したが,右の不全麻痺は変らず,尿・便の失禁は残存していた.消化管出血による貧血のため,輸血を合計1,600ml行なった.入院32日後,全身状態が改善したのでGAGを行ない,左内包外側の皮質下血腫と判明したため,脳外科に即日転科.左側頭-頭頂部の開頭術を行ない,血腫を完全に吸引除去した.術後6時間で右上下肢の動きに改善が認められた.その後ストレスによると思われる消化管出血がおこり,輸血を合計2,500ml行なった.術後51日目にリハビリのため内科に転科.当時,両側上下肢は動くが,尿・便失禁は残存,左下肢に浮腫(静脈切開後の静脈炎による)がみられ,全身状態はかなり悪化していた.転科13日後には平行棒による歩行訓練を開始し,34日後にはてすりにつかまり歩くようになった.49日後には独歩可能となったが,かなりふらつくので杖による歩行訓練を開始.転科89日後には,杖にて自力で便所に行って用が足せ,また,はしも使えるようになったので退院した.以上,発作後約1ヵ月という比較的遅い時期の手術ではあったが,良い予後が得られたと思うので,脳卒中後のリハビリに外科手術の適応を考えることは重要と思う.(竹内)
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