書評
カードつき運動療法―頸・肩・腕・腰のいたみ―日本医科大学助教授 石田 肇 東京厚生年金病院部長 森 健躬 著
服部 一郎
1
1長尾病院
pp.1016
発行日 1973年10月10日
Published Date 1973/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552103030
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腰背痛に対する運動療法に関しては多くの文献がある.これらを通読して混乱するのは,だいたい皆似たりよったりであるが,多くの原因からなる腰痛に対して同じ方法で行なうようにかかれていたり,一つの原因にもとづく症状に相反した方法が処方されていることすらあることである.このため,内科領域のわれわれは,何か割り切れぬ感を抱いていた.
今同整形外科の最高の専門家であり,特にこの方面の第一人者である石田肇,森健躬両先生が,リハビリテーションに対する深い造詣と知識を基にして書きおろされた「運動療法―頸・肩・腕・腰のいたみ―」はこの点を見事に解決していられる.その特徴をのべると,第一にこの方面の高度の専門的知識を非常に平易に要約され,最新の基礎的知識をまず読者に叩きこむ方法をとっていられる.第二に各疾患ごとに,さらに主な症状や時期に従ってキメ細かく運動療法のやり方を変化さしてあり,誠に合理的で納得できる.たとえば頸椎の疾患に対する運動療法が4種類に分けられているのは本書が恐らく最初ではなかろうか.これは永年にわたり豊富な経験をもつ専門家によらねばできないことであるし,何よりも毎日の臨床で,みずから手術を行ない,早期よりベッドサイドでリハビリテーションを指示して来た者のみに可能なことである.第三には従米の本では簡単にすまされていた腰痛のADLにはかなりの頁をさいて親切に指導されている.そして最後に複雑な内容をもつ運動療法をユニークなシンボルで記号化し,カードという,新しい方法と組み合せて,一つの独創的な新機軸を出していられることははなはだ興味深い.
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