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「われわれにも社会復帰できる職場を…」という重度身体障害者の願いと「重度の身障者でも一本立ちができるように」と昭和44年5月タカヤ株式会社電器事業部工場西側敷地に木造スレートぶき作業場(350m2),宿舎(新生荘)鉄筋平屋建て(990m2)が特設された.新生荘は作業場から約60mの渡り廊下つづきになっており,食堂,集会場,医務室(タカヤ株式会社電器事業部診療所)などにはいすが一つもないのが特徴,新生荘には看護婦1名,寮母1名,雑役婦1名が常駐しており診療所の医師は井原市立市民病院整形外科の先生が毎週水曜日に定期健康診断,入所者の一般診療のほか血液,尿検査を月に2回,腎機能検査を年1回行なっている.
重度身体障害者の更生援護施設,岡山県立岡南荘にて訓練中の24名が第一陣として岡南荘の職員および父兄同伴で,新装なった専用宿舎新生荘に赴任,雇用対策法に基づく職場適応訓練(1年間)を開始してから満4年,この間車椅子の仲間たちは次第にふえ今では女性11名を含め46名になった.年齢は16歳から45歳の人達で,カリエス,小児マヒなどが原因で下半身不随になった人16名を除けばあとは全部不慮の事故による脊損の重度身体障害者ばかり,岡山県内の人が30名で他は遠く鹿児島,高知,奈良県と西日本各地の人達,褥創悪化,又は家の都合等で数人は退所したが,ほとんどが定着しており正常な社会復帰をなし社会人として,タカヤ株式会社の社員の身分を持つものが41名(内女子10名)職場適応訓練受講中のものが5名(内女子1名)彼等は真剣に且つ積極的にテープレコーダー,ステレオ,カーラジオなどの音の乱れを調整する1F調整,ベルトコンベアによる流れ作業で部分品や,配線のハンダ付などの作業に従事しており,彼等の作業態度はなにがなんでも一人前の社会人としてやり遂げなければといった気魂のようなものを感じさせる.
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