Japanese
English
講座 磁気刺激の臨床応用・第3回
磁気刺激によるうつ病の治療
Transcranial magnetic stimulation in the treatment of depression.
鬼頭 伸輔
1
Shinsuke Kito
1
1杏林大学医学部精神神経科学教室
1Department of Neuropsychiatry, Kyorin University School of Medicine
キーワード:
うつ病
,
経頭蓋磁気刺激
,
脳機能画像
Keyword:
うつ病
,
経頭蓋磁気刺激
,
脳機能画像
pp.1061-1066
発行日 2011年11月10日
Published Date 2011/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102267
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はじめに
経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;TMS)は,100~200μsの瞬間的な電流をコイルに流し,それによって形成される磁場に伴う誘導電流により,主として大脳皮質の神経軸索を刺激する方法である1).従来は,神経生理学領域における検査方法として利用されてきたが,刺激条件に応じて非侵襲的に大脳皮質の活動性を変化させることができることから,精神神経疾患への治療応用に試されるようになった1).
10~20Hzの高頻度刺激は皮質興奮性を増強し,1Hzの低頻度刺激は皮質興奮性を抑制するとされる1,2).したがって,多くの場合,精神神経疾患の臨床症状から推測される脳局在や脳機能画像により同定された部位が,TMSによる治療標的部位として選択される.ただし,TMSによって形成される磁場はコイルからの距離に比例して減衰するため,通常の8の字コイルによる刺激は頭皮から1.5~3cmに限局し,脳深部を直接刺激することはできない3).
現在までにTMSによる臨床応用が試された精神神経疾患としては,脳梗塞,パーキンソン病,うつ病,ジストニア,耳鳴,神経因性疼痛,てんかん,筋萎縮性側索硬化症,統合失調症,物質依存,強迫性障害,心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD),トゥレット症候群,記憶障害などが報告されている1,4).なかでも,TMSの抗うつ効果に関する研究は多い.
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