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はじめに
高齢者リハビリテーションにおいては,個別ニーズの正確な把握とそのニーズを踏まえた根拠に基づく介入,環境整備は重要な課題である1,2).そのため,簡易かつ的確な個人特性理解のためのシステム構築が望まれている.
しかしながら,これまでに個人特性理解を目的とした高齢者用性格検査は知られていない.高齢者向け性格検査の条件としては,心理テストとして信頼性,および妥当性が担保されていながらも,質問項目数が少なく,被検査者への負担が少ないことが求められる.近年における性格検査モデルは,性格の3因子モデル3),および5因子モデル4)が主流となっている.例えば性格3因子モデルの代表的な検査としてはEysenck Personality Inventory, version Q(EPI-Q)5)が知られており,これは100項目で構成されている.性格5因子モデルで汎用されている検査としてRevised NEO Personality Inventory(NEO-PI-R)4)があるが,これは240項目の質問紙であり,その短縮版としてNEO Five-Factor Inventory(NEO-FFI)4)が開発されているが,それでも60項目となっている.このように,現在使用されている性格検査は,その需要がありながらも,テストを行うこと自体が高齢者にとって大きな負担となっており,検査自体の妥当性と信頼性を損なう恐れを内包しているのが現状である.
これまでにわが国においても,高齢者の性格傾向と長寿との関係や日常生活能力との関係などが調査研究されてきた.これらの研究における性格傾向の把握には,NEO-FFIやMinnesota Multiphasic Personality Inventory-2(MMPI-2)などの標準化された心理テストを使用したもの6,7)や,「明るい」,「無口」などの性格傾向を表現する単語をそのまま質問紙により回答を得る方式を採用したもの8)などがあり,多様であった.これまで実施されてきた方法では,高齢者に特化したものではないため,少なからず調査結果の解釈に限界があったことは否めない.すなわち,これまで使用されていたテストは,質問項目が多く,質問内容によっては困難な課題と感じる対象者もいた.そのため,当該心理テストを最初から終わりまで実施するためには,一定の情報処理能力が必要であり,その時点で,結果を解析する際の母集団に偏りが生じてしまう問題がある.また,心理テストとして標準化を行ったテストでなければ,科学的な裏付けが担保されないという限界がある.
そこで,われわれは前述した諸問題を解決すべく,約2年前に高齢者用簡易性格検査の開発を行った9).本稿では,当該検査の概要,および臨床応用について紹介する.
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