巻頭言
最近の理学療法士,作業療法士の卒前教育に思う
美津島 隆
1
1浜松医科大学リハビリテーション科
pp.897
発行日 2009年10月10日
Published Date 2009/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101605
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介護保険制度に始まり,回復期リハビリテーション医療,在宅訪問リハビリテーションといった厚生労働省の施策により,最近の訓練士養成に対する社会的ニーズは高まっている.当然ながら,それとともに,訓練士の養成校も雨後のタケノコのように,劇的に増加している.その結果,毎年社会に輩出される訓練士の数は飛躍的に伸びてきており,現に2008年度の理学療法士および作業療法士の国家試験の総合格者数はついに1万人を超え,12年前の約4倍となった.しかし残念ながら,その卒前教育の中身は大変お寒いものと言わざるを得ない.
作業療法士の実習授業で,全く「装具」を作製しない学校があると,実習に来ていた学生に聞いたことがある.またほとんど臨床経験のない訓練士や,やっとその資格を得たばかりの経験年数の浅い若い理学療法士,作業療法士が,専門学校の講師として学生を教育していることも多いと聞く.さらに,学生が増加したため,多くの学校で卒業最終年に行われる約2か月にわたる訓練士の臨床実習の受け入れ病院を探すことが困難になっている.結果として実習さえできればよいとばかりに,同じ学生が,実習中ほとんど変化の少ない慢性期の患者しかいない病院や施設をいくつも回ったりすることもあるという.これらは大変由々しき問題である.本当にこのような状態で,リハビリテーションマインドを確立させる教育ができるのであろうか.急激なニーズの高まりに,教育現場が実習先を含めて,質の高い教師を準備できていないのである.
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