Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ガンサーの『回想のローズヴェルト』―車椅子の大統領
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.900
発行日 2004年9月10日
Published Date 2004/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100707
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1950年にジョン・ガンサーが発表した『回想のローズヴェルト』(清水俊二訳,早川書房)は,小児麻痺に罹患して歩行困難になりながら,51歳で第32代アメリカ合衆国大統領に就任したフランクリン・ルーズヴェルトの伝記であるが,そこでは彼の障害が彼の生き方や物の考え方に与えた影響が強調されている.
ルーズヴェルトが小児麻痺に冒されたのは,1921年,39歳の時である.この病は彼の下肢の運動機能を奪い,彼は亡くなるまで数センチの階段しか上れず,小さい子供に接吻するためにかがむことも,物を拾うために体を曲げることもできなくなった.自分だけでは服の着脱ができず,副木と演壇を支えにしなければ立っていることもできない彼が旅行する時には,どこへ行くにも駅に特別の斜道をつけなければならなかった.当時のマスコミはあえて触れなかったが,ルーズヴェルトはいわば車椅子の大統領だったのである.
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