現代のカルテ
アメリカ大統領選挙
野口 肇
pp.48
発行日 1964年3月1日
Published Date 1964/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202722
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ことしの秋は4年目にいちどくるアメリカ大統領選挙にあたります.といっても直接選挙ではなく,各州でえらばれた大統領指命代表の数できまります.そのさい民主党なり共和党が事前にえらんでおいた大統領候補者が正式な大統領になるしくみです.だからいまハデな選挙運動がはじまり,だれが大統領ないし副大統領候補になるか,アメリカの新聞,雑誌はそればかりかきたてています.
ところで事前運動といいましたが,あの悲劇的な故ケネディ大統領の暗殺事件も,じつは大統領選挙のための遊説中のできごとでした.大統領ともなればあのひろいアメリカの各州からまんべんなく票をとらなければならない.しかも中央集権がてっていしている日本などとちがい,それぞれの州が独自の警察をもっていたりして政府の権限がわりによわい.故ケネディのばあいも,西北部の工業地帯におもな地盤があって,南部方面,つまり農業中心で黒人がたくさん働き,人種偏見のつよい地域であまり人気がなかった.そこであの南部に力をいれて走りまわったことになります.もうひとついえば,ケネディのあとをついだ副大統領のジョンソンは事件の起こったテキサス州の出身で,保守的な南部を代表する意味でケネディとコンビをくんでいた人物です.つまり伝統的に,正副大統領は,やや進歩色のつよい人と保守色のつよい人とのバランスをとってきているのです.
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