巻頭言
医学部での共生活感教育の確立を願う―佐賀大学医学部の挑戦
齊場 三十四
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1佐賀大学医学部地域医療科学教育研究センター福祉健康科学(社会生活行動支援)部門
pp.1023
発行日 2004年11月10日
Published Date 2004/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100658
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今,わが国は,全てが米国の経済論理をベースとした効率主義と競争主義・強者優先論理により,少数・弱い立場の人への配慮は建前的となり,時には自己責任といった風潮のみが強まったのではと危惧せざるをえない社会情勢にある.私の所属した佐賀医科大学も時代の流れで,新設医科大学の多くとともに大した論議もないまま佐賀大学に統合,行政法人化されたとの感じは否めない.結果,さまざまな変化が良い方向ばかりでなく,医学部の主体性尊重が不十分ではないかなどマイナス面も感じている.
一方,社会的には,医師のあり方には批判が提議され続けている.インフォームドコンセント時代ではあるが,患者はやはり弱い立場であり,「医療過誤」,「理解し難い自己満足型説明」を受けたと厳しい意見や批判が依然として存在している.医学部受験という競争を勝ち抜くことを基軸として,中学,高校時代を送ってきた医学部学生の人間関係構成には,勝ち組感覚が影響していると思われる場面に出会うことも多い.異なる立場の人を理解する「共生活感」を豊かに享受できない背景を背負っているのかも知れない.しかも,医学部ではぎっしり積み込まれる臓器別,診療科別のカリキュラムを消化していかねばならず,他の学部学生のようなゆとりはなく,医学生の「共生活感」を育成する場が確保できていないのかも知れない.
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