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はじめに
不顕性骨折(occult fracture)とは「初診時X線像で明らかに診断できなかった骨折」という意味で,不全骨折(insufficiency fracture),疲労骨折(fatigue fracture),骨挫傷(bone bruise)を総称して使用されている(表1).不全骨折は骨の粘弾性の低下および脆弱性により生じる骨折1)で,主に骨粗鬆症患者の大腿骨頸部に発症する.一方,疲労骨折は正常骨に生じるもので,骨に反復して加わる外力によって骨の同じ部位にひずみ増大が集積して生じ,繰り返し同じ動作をするようなスポーツ選手に多く発症する.また,骨挫傷は,外傷において主に膝周囲のX線像で異常所見を認めず,MRIで異常信号を呈した病態を言う2).
大腿骨頸部不顕性骨折
大腿骨頸部不顕性骨折は骨粗鬆症患者に発症することが多い(図1).大腿骨頸部骨折全体における不顕性骨折の頻度について,Faircloughら3)は1.9%,及川ら4)は4.3%と報告している.
診断については骨シンチグラフィーでの集積増加(図2),MRI T1強調像での線状の低信号(図3)が有用である.Rizzoら5)は,大腿骨頸部不顕性骨折の診断に関してMRIと骨シンチを比較して,骨シンチでは受傷後72時間経過しないと正確に描出されないのに対し,MRIでは24時間以内で正確に描出でき,早期診断に有用であると報告している.杉山ら6)も,大腿骨頸部不顕性骨折を疑った29例に対する骨シンチおよびMRIの比較で,骨シンチの感度・特異度はそれぞれ70%,100%であるのに対し,MRIではともに100%であり,特に発症後早期においてMRIがすぐれていると報告している.MRIでの本骨折の診断は概ね発症後24時間前後で可能5)で,早い症例では2~12時間後に診断可能であった6).
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