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もの忘れ相談,もの忘れ外来の役割
65歳以上の高齢者における痴呆症の有病率は約7~8%と推定され,85歳以上の27%,80~84歳の15%,75~79歳の7%,70~74歳の3.6%が痴呆で,5歳刻みに倍の有病率となっている.今後,後期高齢者の増加に伴い2025年には高齢者の約10%が痴呆症ということになり,実に300万人の高齢者が痴呆症になることが推定されている.ここで重要なことは,年齢とともに有病率は上昇する(age related)が,決して「年のせい(aging related)」ではなく,「痴呆症は病気である」ということである.
介護保険導入前まで痴呆症は,一般住民はもとより医療者からも「年のせい」と片付けられて放置され,その原因は確定されず,家族が困った状況にならないと介護の相談すらなかったのが実状であろう.介護保険が導入され,早期の介護相談は行われつつあると思われるが,未だ痴呆症が病気であるという認識が乏しいため受診が遅れ,さらに,医師の不十分な認識もあり診断も遅れ,痴呆症への医学的介入とそれに関連した専門的各種療法や的確なケアへのアクセスも不十分な可能性がある.適切と言えない介護や家族の接し方でも,徘徊や攻撃性などの行動心理学的症候(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)を起こさせたり悪化させたりし,介護負担の要因となる.また,診断が遅れることで治療可能な痴呆症(後述)に対する医学的介入が遅れてしまい予後に影響を与えうる.
このような背景から,痴呆症に対する,① 情報提供と啓発,② 早期診断,③ 早期介入(医学的介入,各種療法,介護,自助援助,介護者のケアなど),④ 連携の窓口(予防活動,福祉関連施設,介護施設,地域住民など),⑤ 将来設計の援助などを役割として,安心感を提供するために,もの忘れ外来が設置されていると考えられる.また,痴呆症は決して医学的介入だけで解決する疾患ではなく,自分の住み慣れた地域で生活していくために,日ごろの生活を支えてくれる家族や,地域住民の理解と対応が必要とされる疾患である.それだけに,地域アプローチの連携窓口としての役目も大きい.
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